(1)
狂宴は続いていた。
あれから利佳は、深紅のラバースーツと、黒の合皮とピンクのビニールのチュチュを着せられ、全頭 式のラバーマスクを被せられ、猿轡をされた姿で犯されていた。
「ングッ !! ングッ !! ングッ !! ングッ !! ングッ !! ングッ !! ングッ !! ングッ !! ングッ !! ングッ !! 」
粘液同士が絡む音、ゴムで覆われた肉と肉とが打ち合う音、手足の枷に繋がる鎖がジャラつく音、利佳の乳首のピアスに 付けられているベルの音、そして、猿轡の隙間から零れる唾液と共に利佳の口から溢れ出る、濁った呻き声が、一定の リズムを持って発せられていた。犯されながらよがり悶える、利佳の動きも非常にリズミカルで、まるでバレエを踊っているかの様だった。
(何て醜い姿なの…。 何て浅ましい姿なの…。 何て汚らわしい姿なの…。 何て惨めな姿なの…。
だけど、これが今の私だ…。 ゴムを纏って、嫌らしい事をされて、よがり悶えている牝が、私なんだ…)
利佳の目前には、大きな鏡があった。つまり、利佳は自分の犯されている姿を見せられながら、犯されている事になるのだ。 頭は固定されておらず、目も開けっぱなしにされていない為、目を逸らそうと思えば、いくらでも逸らす事が出来た。
しかし、利佳は目を逸らさなかった。いや。逸らせなかったのかもしれない。自分が汚れをしらなかった頃、夢見ていた 将来とは全くかけ離れた現実の前に、それを受け入れざるを得なかった。
(私はこの人達の手で、牝にされてしまったの…。先生に憧れて、恋していた、利佳って女の子は、どこにもいないんだ……)
利佳は程なく、絶頂を迎えた。
「ングッ !! ンググッ !! ムグウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ !!!!」
獣の様な呻き声を上げ、躰を仰け反らせて悶え、やがて力が抜け、その場に崩れ落ちた。男達の手で利佳のマスクは外された。 荒い息をしながら、利佳は顔を上げて先程まで、自分の痴態を写していた大鏡を見入った。利佳の目に写った物は、髪を乱し、 ゴムを纏った、蒼白い顔の、幼き淫売の姿だった。
「醜いわ…。卑しいわ…」 利佳は小声で呟いた。
(2)
休む間もなく、利佳は深紅のラバースーツに身を包んだ三人の女性に抱えられ、その場を後にした。 再び姿を現した時、利佳は白いラバーの全身タイツの上から、黒と白の合皮とビニールのチュチュを着せられていた。
「皆さん、これからRIKAちゃんのレズプレイを、お見せしまぁす」
「おっ、それもいいねぇ」
「見せておくれよ」
周りの客が煽りたてた。それを聞いた時、利佳は我に返って酷く狼狽した。彼女は元来、同性愛については否定的で、 例え年が離れていても、男と女が愛し合うのが当然だと信じていた。男同士、又は女同士には友情は生じても、恋愛は生じない。 そう思っていた。ましてや、肉体関係など、想像も出来なかった。
だが、彼女達がそう決めた以上、利佳はそれに従うしかなかった。いや、従わされると言った方が良いかもしれなかった。 利佳が発表会が始まる前に助けを求めたのは彼女達だった。女であるが故に、今の自分の悲しみや苦しみを理解ってくれるかも。 そんな、甘えと淡い期待が利佳にはあった。
しかし、そんなものは、あっさりと裏切られる。その時利佳は、自分だけがマゾヒストで、後の人々は皆、男も女もサディスト なのだという事を改めて知らしめられた。
必死でレズプレイを拒もうとしたが、ディープキスをされ、舌同士を絡めさせられると、もう抗えなかった。後はもう、 彼女達の思うがまま、されるがままだった。全身を彼女達の手や舌が這い、バイヴやディルドゥでじっくりと、嬲られ、辱められていった。
「いやぁぁ…、アアッ !! 、アッ !! 、アアァァァ…」
利佳は最早、切なく喘ぎ、悶えるだけだった。
(3)
レズプレイの後、利佳はマスターのフェラチオの相手をさせられていた。合皮とビニールのピンク色のチュチュは、 ロマンチック・チュチュの様にスカート部分が長く、フワッと膨らんでいた。そのスカートの中からは、バイヴの音が聞こえてきていた。
「ンー… ンー… ンー… ンー… ンー… ンー… ンー… ンー… ンー… ンー…」
利佳は濁った呻き声を上げながら、フェラチオに励んだ。とても丁寧なフェラチオだった。すぐにも、利佳の唇からスペルマが溢れ出た。
「ングッ !! ンンーーーッッ !! 」
利佳の方も絶頂を迎えたらしかった。急に力が抜けた様に、その場にへたり込んだ。マスターは利佳のヴァキナからバイヴを抜いてやった。バイヴは利佳の淫汁で濡れていた。
「よく頑張ったね。今のフェラチオはご褒美だよ。皆さん…」
マスターは、本当はここでお開きにするつもりだったらしかった。だが、利佳の行動が、この後の予定と、利佳の運命を大きく変える。 利佳は尚もフェラチオを続けようとした。執拗にマスターのペニスに食らいつこうとした。余りにもしつこいので、調教師の鞭代わりのゴム紐が飛んだ。 甲高く、乾いた音と、利佳の悲鳴が鳴り響く。
「いい加減にしないか !! 」
「RIKAちゃん、これ以上…、ん?」
マスターは利佳を窘めようとしたが、利佳の瞳が潤んでいるのに気付いた。
「マスター…、この口を塞ぎたい…」
「な…、何故だい?」
利佳は小声で訴えかけた。
「怖いの…。この口を塞いでないと、言ってしまいそうで…。言ってはいけない事、言ったが最後、 もう、私が私でなくなっちゃう事を言っちゃいそうで…。ですから、今暫く続けさせて…」
主は暫く利佳を黙って見つめていた。そして、穏やかな口調で話しかけた。 「怖がらなくても、いいんだよ。言ってしまった方がいい。寧ろ、その言葉を、皆、待っているんだ。 それを言って、乗り越える事で、利佳ちゃんは生まれ変われるんだ…」
「マスター……」
利佳は涙を溢れさせながら、フェラチオを続けた。主もそれを許した。そして…。
「皆さん。本来なら、これでお開きにする予定でしたが、予定を変更致しまして、RIKAをもう一責め致します。それを持ちまして、 本日のフィナーレ、ラスト・ステージとさせていただきます」
主の言葉に、客達は皆、拍手した。そして、利佳はフィナーレの支度の為、二人の調教師に抱えられて、退場した。
(もう終わりだ…。全てが…、私が…。何もかもが終わりだわ…)
利佳は心の中で、そう呟いた。
(2002年1月)
© shiiya